コラム
ここには、当サイトの本編では十分にお伝えしきれなかったことや、トラウマやPTSDの理解に役立つ関連情報をお伝えしていきます。
あなたの関心に合うものが見つかったら、幸いです。
大切な人を支えるためにできること
身近な人がトラウマを経験したとき、どう支えれば良いかわからないと感じるのは当然です。身に危険が迫る衝撃的な出来事を予期せず体験した本人が、ショックを受け、傷つき、混乱するのと同じように、自分にとって大切な人の身にそのような出来事が起きたことに、ショックを受けるのです。また、大切な人が傷ついているのに、自分には何もできないように感じて無力感や罪悪感を抱く人もいます。
もし、あなた自身が憔悴して何もできる状態ではないと感じるのでしたら、自分自身を労りケアすることが最優先です。
(→ コラム「自分自身を大切にする」 参照)。
自分自身を支えることはできていて、大切な人のために何かしたいと考えるのであれば、例えば次のような方法があります。
一緒に楽しむ計画を立てる
相手のペースを尊重しながら、外出や良い気分になれそうな活動の計画を一緒に立てることができます。ただし、以前はできていたこと・楽しんでいたことも、トラウマの影響により恐れて避けたくなる場合があることを、心に留めておきましょう。例えば、以前は外出を好んだ人が今は家を出たがらない場合、無理に連れ出すよりも、家の中でリラックスして楽しめることを探すほうが役立つかもしれません。
一緒に病院へ行く
トラウマを体験した直後は、多くの人が普段と異なる状態を経験します(→「トラウマの影響」 参照)。しかし、それが長く続くようなら、特別なケアが必要かもしれません。特に、眠れない・気分が落ち込む・不安が強いなど、ストレスの高い状態が続いていて、日常生活がままならない場合には、その状態を改善するために医療が役立ちます。
1人で受診するのを怖く感じる人は、一緒にいてくれる人がいると心強く感じるでしょう。また、受診時に、トラウマの影響を強く受けていると難しいこと(集中して人の話を聴く、聞いたことを覚えておく、落ち着いて詳しく説明するなど)をサポートすることもできます。
安全のための計画を立てる
トラウマを体験した人の中には、死にたい気持ちが湧いてくる人もいますし、急に出来事を思い出したり、フラッシュバックや悪夢といった、本当に不快で、混乱をもたらす症状を経験する人もいます。そうした状況に備え、対処法を一緒に話し合っておくと安心です。例えば、フラッシュバックが起こった時に傍らで何をすると良いかを話し合ったり、過去に役立った方法を共有したりしておくと、いざという時によりよく助けになれます。
こまめに話し合う
支援のための一般的な知識を学ぶことは必要です。しかし、学んだことが、あなたの大切な人にも当てはまるのか、その人が何を望み、何はしてほしくないと思っているのかは、当人でなければ分かりません。よかれと思ってしたことが、逆に大切な人を追い詰めてしまわないよう、丁寧に、穏やかに、話し合うことが必要です。大切な人が自分のペースで話せるよう心を配りながら話に耳を傾けるとともに、あなた自身の気持ちや、できること・できないことを伝え、お互いにとって快くいられる方法を探っていきましょう。
参考文献
文:髙岸百合子